
揚げ物など料理で使った後に残る「廃食油」を、高効率のプラントで再生してリサイクルオイルを生み出すーー。こんなビジネスを興して脱炭素社会の実現に貢献しようという企業が今年3月、名古屋市でうぶ声を上げた。
この企業、MMP株式会社を立ち上げたのは、ダイハツ工業の元取締役で、軽自動車のチーフエンジニアも務めた森下勝之さん。2012年にはダイハツの関連会社の社長を退任しており、第3の会社人生に挑む74歳だ。
MMPのスタートを強力に後押しするのが、愛知県のスタートアップ支援事業。名古屋市中村区に置かれた施設「PRE-STATION Ai」を拠点に、4月1日に支援プログラムがスタートした。MMPは支援対象となるスタンダードメンバー43社に選ばれている。
名古屋駅そばのPRE-STATION Aiで、森下MMP社長に起業の狙いや事業の展望を聞いた。
高効率リサイクルでCO²削減
森下社長が廃食油に着眼したのは、廃食油のリサイクル率は低く、「誰でも参加できるエネルギー再生として、社会・個人が取り組めるきっかけになる」と考えたからだ。
MMPが開発するのは、事業で出た廃食油を作動油や切削油などのリサイクルオイルに再生するプラント。食品などの工場や外食店、スーパー・コンビニにリースし、精製油は販売することも、同じ場所で使うこともできる。「現状のシステムの効率を大きく上回る基本技術を持っている。設置者は排出二酸化炭素と経費を削減できる」と説明する。
廃食油の再生分野では、手強い競争相手は世界でも見当たらず、事業が国内で軌道に乗れば、世界市場への進出も考えられるという。
愛知県は2024年10月、「STATION Ai」を名古屋市昭和区でオープンし、スタートアップ支援事業の本拠地とする。森下社長は「そのころ置いてもらったプラント1号基のメリットが、お客さまにもわれわれにも出てきている計画になっている」と話した。
愛知だからこそ
愛知県のスタートアップ支援事業を担当する経済産業局の柴山政明革新事業創造部長は、愛知の強みについて「自動車を中心とした製造業が圧倒的に強く、名古屋大学をはじめ研究・教育機関も充実しており、その産官学が組んで進める施策は強力だ」と自信を示す。
フランスをはじめ世界の先進事例も研究し、「支援には『拠点』を置くことが必要不可欠」と判断して設置するSTATION Aiは、国内外から起業希望者が集う7階建てのスマートビルが施設の中核になる。
MMPについては「社会的課題を解決する先進のビジネスモデルを持ち、退職者が起業という人材活用の特徴もある」と期待している。
ソフトバンクが事業運営
PRE-STATION AiとSTATION Aiの運営事業は、ソフトバンクグループのSTATION Ai株式会社(名古屋市)が担う。ソフトバンクの社内起業を手掛けた経験もある佐橋宏隆社長は「STATION Aiには世界から、オンラインも含め1000社に安い家賃で入ってもらう。常駐スタッフらから経営ノウハウの伝達や資金調達も含め、さまざまな支援が原則無料で受けられる」と説明している。
引用 https://www.kyodo.co.jp/life/2022-05-13_3689412/